せっかく残された遺言書ですが、実際は利用されないことが少なくないのです。
なぜならば、税金的のことを考えると相続人の負担が重くなってしまうケースや、売却の予定のない不動産を兄弟の共有にしてしまうケース(将来的には問題を残します)等相続人にとっては現実的でないものが少なくないからです。
もとより財産の処分についてはご自身の意思が尊重されるべきですが、遺言書を残す以上は、実際に資産を活用することになる相続人にとっても現実的なものでであることが重要です。
私どもは財産処分についてのご希望をお聞きしながら、相続人にとっても有利な財産の処分・遺言書の残しかたについて提案いたします。
遺言とは,自分が生涯をかけて築き,かつ守ってきた大切な財産を,最も有効・有意義に活用してもらうために行う,遺言者の意思表示です。民法では相続人の範囲とその相続分を定めておりますが、現実の財産は単純な分割に馴染むものばかりでなく、場合によっては均等に財産を分割することが不利益を生じるケースも出てくるのです。
その利害関係の調整を故人がその遺志として遺言の形で残しておくことがその後の相続人間のトラブルを回避することにも繋がってまいります。また相続人もその故人の遺志を尊重しなければなりません。
言うまでもないことですが故人も遺言を残す以上はその遺言書にその深い思慮が込められていなくてはならないでしょう。遺言書があったがために相続人に後に紛争の種を残したりするケースも散見されているようです。
遺言は民法で定められた一定の方式が要求されます。一般には、普通方式の次の3つの遺言が利用されています。
1. | 自筆証書遺言 遺言者が自分で遺言の内容の全文、日付および氏名を書き、捺印したものです。 《メリット》 ・自分で書けばよいので,費用もかからず,いつでも書ける。 《デメリット》
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2. | 公正証書遺言 証人2人以上の立ち会いのもとで、遺言者の口述書を公証人に作成してもらい、それぞれの人が、署名、捺印したものです。 《メリット》
・費用がかかる |
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3. | 秘密証書遺言 遺言書の内容を秘密に保管するために、封を施された遺言書の封筒の中に遺言書が入っていることを、証人2人以上の立ち会いのもとで公証人に証明してもらったものです。 《メリット》
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故人の財産を故人の生前にその方の意思として残したものが遺言書です。
相続人は原則として遺言書の指示に従わなければなりません。
特に次のような場合には遺言が残されていなければ救済されない方もいます。
1. | 夫婦の間に子供がいない場合 夫婦の間に子供がいない場合に、法定相続となると,夫の財産は、妻が4分の3、夫の兄弟が4分の1の各割合で分けることになります。しかし、長年連れ添った妻に財産を全部相続させたいと思う方も多いでしょう。そうするためには、遺言をしておくことが必要です。兄弟には、遺留分がありませんから、遺言さえしておけば、財産を全部愛する妻に残すことができます。 |
2. | 先妻の子と後妻がいる場合 先の妻は相続人でありませんが先妻との間に子供がいればその子供は自分にとっては血の繋がった子供ですから立派な相続人です。後先と先妻の子と間では、時として関係が良くない場合もあるのではないでしょうか。これらの関係の調整のためには個人の意志としての遺言が必要な場合もあるのではないでしょうか? |
3. | 息子の嫁に財産を分けてやりたいとき 息子さんが亡くなった後に、自分の介護をしてもらったような場合、お嫁さんになにがしかの財産を残してあげたいとお考えの方もいることと思いますが、息子さんのお嫁さんはご両親の相続人ではありません。息子さん夫婦にお子さんがいればそのお子さんが息子さんの代襲相続人として相続人になるので、まだ良いのですが息子さん夫婦に子供がいない場合にはお嫁さんに財産を残すにはお嫁さんを養子にするか、遺言でお嫁さんに財産を残さなければなりません。そうしないとお嫁さんは何ももらえないことになってしまいます。 |
4. | 内縁の妻の場合 実質的に夫婦として生活していても、いわゆる内縁の妻で婚姻届けを出していなければ法律上の配偶者として扱われません。つまり法律上は相続人となりませんので内縁関係の妻には残される財産はありません。この場合に妻に財産を残したければ遺言を残すことが必要です。 |
5. | 相続人がいない場合 相続人が全くいない方の財産は最終的に国庫に帰属することとなります。その前提に特別な縁故者を探すための調査が行われることもありますがその調査のためには諸々の手続きに相当な時間と労力をかけなければなりません。このような場合には予め生前お世話になった方に財産が残るようにしたいとか、お寺や教会等の特定の公益を有する団体に寄付したいとか遺言の形で残すと良いでしょう。 |
6. | その他 上記のほか、長男に事業を次がせたいとか、同居していた子供に特に手厚く財産を残したいとか、兄弟の仲が良くないので遺産分割協議の困難が予想される等のそれぞれの家庭の事情に応じて財産承継についての特別の配慮が必要な場合には、遺言をしておく必要があります。 |
次のようなものがあります。
(1) | 認知 遺言で認知することも認められています。(死後認知) この場合、遺言執行者に手続きをすすめてもらわなければなりません。 |
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(2) | 遺贈・寄付行為、信託の設定などの財産の処分 法定相続人以外の者に対する遺贈、財団法人を設立するための寄付行為等の財産処分が遺言できます。 |
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(3) | 未成年者の後見人、後見監督人の指定 未成年者に対し親権を行使する者は、遺言で後見人を指定できます。 |
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(4) | 相続人の廃除とその取消し 相続人の廃除とは被相続人の請求に基づいて家庭裁判所が一定の理由のある相続人の相続権を奪う手続きです。
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(5) | 相続分の指定とその委託 民法の法定相続分が規定されていますが、遺言により民法の割合に優先して誰にどの割合で相続させるかを指定することができます。 |
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(6) | 遺産分割方法の指定とその委託 現物分割、換価分割、代償分割等の分割方法の指定ができます。ちなみに代償分割とは、甲に不動産を相続させるが、その代わりに甲は乙に対して現金を支払うことにで甲と乙の財産上の不公平を解消しようとする分割方法です。 |
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(7) | 遺産分割の禁止 相続開始の時から5年を超えない期間に限って分割を禁止することができます。 |
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(8) | 共同相続人の担保責任の指定(遺産に瑕疵があった場合) それぞれの相続人はその相続分に応じて他の相続人に対して担保責任を負うことを原則としていますが例えば一部の相続人の相続分が特別に多かったような場合には、その者に優先的に担保責任を負わせるように指定することが可能です。 |
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(9) | 遺言執行者の指定とその委託 公正証書遺言の実務においては遺言執行者を立てることが原則となっています。 遺言執行者でなければ、認知と相続人の廃除とその取消しについては執行することができません。遺言執行時に、遺言執行者にその就任を拒絶された場合には家庭裁判所にてあらたな遺言執行者選任してもらうこともできます。 |
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(10) | 遺贈の減殺方法の指定 遺留分の減殺請求があった場合に、減殺の優先順位を特定の不動産から行うように指定したり、特定の者から行うように指定することができます。 |
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(11) | 祖先の祭祀主宰者の指定 通常は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継することになります。 |
1.認知
2.財産処分
3.相続人の廃除または排除の取り消し
4.祭祀承継者の指定(墓や仏壇などの承継者)
1. | 相続分の指定または指定の委託(法定相続分と異なる相続分の指定) |
2. | 特別受益者の相続分の指定 共同相続人中に被相続人から受けた財産的利益を受けた場合にその分を被相続人の相続財産に加えてその合計を被相続人の遺産とすることで各相続人間の公平を図ろうとする趣旨のものです。 |
3. | 遺産分割方法の指定または指定の委託 |
4. | 遺産分割の禁止(5年以内の期間) |
5. | 相続人相互の担保責任の指定(遺産に瑕疵があった場合) |
6. | 遺言執行者の指定または指定の委託 |
7. | 遺留分減殺方法の指定 |
8. | 未成年者の後見人・後見監督人の指定 父母の一方が既に死亡していたり、離婚等により父母何れかが親権者になっている場合のみできます。 |
なお、民法に規定されている以外のことを遺言に書いたとしても法的拘束力がないだけで遺言者の意思を尊重して遺言に同意すればよいことになります。
遺言は、人の最終意思を保護しようという制度ですから、訂正や取消し(遺言の取消しのことを,法律上は「撤回」と言います。)は、いつでも、また、何回でもできます。遺言は、作成したときには、それが最善と思って作成した場合でも、その後の家族関係を取り巻く諸状況の変化に応じ、あるいは、心境が変わったり、考えが変わったりして、訂正したり、撤回したいと思うようになることもあると思います。さらに、財産の内容が大きく変わった場合にも、多くの場合、書き直した方がよいといえるでしょう。
以上のように、遺言は、遺言作成後の諸状況の変化に応じて、いつでも、自由に、訂正や、撤回することができます。ただ、訂正や、撤回も、遺言(その種類は問いません。)の方式に従って、適式になされなければなりません。
私どもは財産処分についてのご希望をお聞きしながら、相続人にとっても有利な財産の処分・遺言書の残しかたについて提案し、必要書類の取得、公証人との打ち合わせ等させていただいております。
1. | 遺言者の印鑑登録証明書(3か月以内のもの) |
2. | 財産をもらう人が相続人の場合は戸籍謄本その他の場合は住民票 |
3. | 遺産が不動産の場合は、各不動産の登記事項証明書とその不動産の評価額が分かる固定資産評価証明書又は納税通知書 |
4. | 遺産が金融資産(預貯金、株式等)の場合は各金融機関名・支店名とそれぞれの金融資産の額(概算)を記載したメモ |
5. | 遺言内容(財産の分け方など)をメモした書面 相続させる予定の方が先に亡くなった場合に備えて、そのときは別のどなたに相続させるか決めておくこともできます。(予備的遺言といいます) |
6. | 祭祀承継者について (遺言に定めない場合は慣習に従うことになります) |
7. | 遺言執行者の選任(相続人、受遺者、証人であっても執行者になることがてきます) その方の住所、氏名、生年月日、職業のメモ |
8. | 証人(立会人)2名の選任 未成年者、推定相続人、受遺者、その配偶者と直系血族の方、被後見人、被保佐人は証人になれません。 上記以外の親族や他人であれば良いのです。(適当な方がいない場合には公証役場にて手配してもらえます) それぞれの方の住所、氏名、生年月日、職業のメモ。 |
9. | 財産分けについて、遺言者のお気持ち(付言事項)がある場合には、その内容を記載した書面 |
1. | 財産の相続又は遺贈を受ける人ごとにその財産の価額を算出し、これを下記基準表に当てはめて、その価額に対応する手数料額を求め、これらの手数料額を合算して、当該遺言書全体の手数料を算出します。
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2. | 遺産総額が1億円以下のときは、上記1の基本手数料とは別に、遺言加算として11,000円がかかります。 | |||||||||||||||||||||||
3. | 正本・謄本の費用は枚数(1枚につき250円)によって決まります。 遺言書は、通常、原本、正本、謄本と3部作成し、原本を公証役場に残し、正本と謄本を遺言者にお渡ししますが、これら遺言書の作成に必要な用紙の枚数分(ただし、原本については4枚を超える分)について、1枚250円の割合の費用がかかります。 |
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4. | ご自宅や病院等に出張し病床で作成する場合には、上記1の基本手数料の5割増しとなり、日当1万円(4時間以内)と交通費が必要となります。 |